独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「彩萌が本家に通っていると時芝夫人に聞いて、動揺した。ネットの記事を読んで本当に離婚する気なのかと……俺を好きだといったのは嘘なのかと苦しくなった」



「違うわ! あれは本当に……」



「知っている。一貴にも怒られたよ。ずいぶん思いつめさせて、酷い勘違いをしてすまなかった」



「ううん、きちんと向き合って、話せばよかったの。抱えていた不安も自信の無さも、すべてをぶつければよかった」



「俺も自分の弱さやカッコ悪さを、全部告げるべきだった」



ギュッと瑛さんが抱きしめる腕に力をこめた。



「瑛さんはいつだって完璧でカッコいいし、優秀でなんでもできる人よ」



「かいかぶりすぎだ。本当の俺は彩萌限定で独占欲も強くて、嫉妬深い。でも年上とか妙なプライドが邪魔をして、自分をさらけ出せないし、なによりもお前が離れていくのが怖い」



私の肩口に顔を隠しながら告げるこの人を、心から愛しいと感じた。



胸にこみ上げる想いを、どうすればすべて伝えられるだろう?



「どんな瑛さんも大好きよ。もう絶対に離れない」



胸が詰まって嗚咽が漏れる。

泣きたいわけじゃない、泣くべきじゃないとわかっているのに想いが心からあふれだしてしまう。



「……それが一番嬉しい、俺が欲しい言葉だ」



体を少しだけ離した彼が唇で頬を伝う涙を拭ってくれる。

温かな感触に胸が詰まった。



「居場所が、ないと思ったの……赤ちゃんを無事に出産したら、瑛さんがどこかへ行ってしまうんじゃないかってずっと怖くて……っ」



こぼれ落ちる涙とともに、ポロポロ弱音が出てきてしまう。

瑛さんはとても優しい表情で私を見つめ、背中をあやすように撫でてくれる。
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