独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「ひとりで苦しませて、悪かった。お前も赤ちゃんもかけがえのない宝物だ。絶対に手離さない。彩萌は俺に、人を真剣に愛する素晴らしさを教えてくれた」



心なしか、彼の目が少し潤んでいるような気がした。



「……お前は俺の生涯で唯一の我がままなんだ」



『内緒話があるの。この間実家に帰ったとき、母に聞いたのよ。私との婚約破棄を正式に決める場で瑛が初めて我がままを言ったんですって』



『これまでの瑛はどんなときも冷静で合理的な方法ばかりを的確に見定めて選択してきたのに、そのときは一切の損得勘定を見せなかったそうよ』



朝霞さんの声が脳裏によみがえる。



「……それって、瑛さんが朝霞さんのご両親の前で口にしたっていう……?」



「里帆に聞いたのか?」



うなずくと、大きな手が私の髪を撫でた。



「どうしても譲れないものがあると、初めて知った。彩萌は俺に“初めて”の出来事をたくさん教えてくれる」



どうして、そんなに優しくて嬉しい言葉ばかりをくれるの?



幸せすぎて胸が痛いなんて、私のほうこそ初めての経験だ。
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