独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
ほんの少し口角を上げ、茶目っ気たっぷりに話す。

義母には同じような内容を再三言われていた。

義父のように采配を振るい、良くも悪くも目立つものでなくとも、自分が好きな仕事を続けたいと思うときはあったと。

もちろん在宅での仕事や、作法について学んだり、家庭を切り盛りするのはとても立派だと口にしていた。

とどのつまり、後悔のない生き方を自由に選択するのが一番大事だと話してくれた。

歴史ある梁瀬家を変革しようとしている彼が伝えようとしてくれているのは、義母と同じ内容だろう。

どこまでも思いやり深い夫に、涙腺が壊れてしまう。



『どんな仕事も立派だし、彩萌が後悔しない生き方を選択してほしい。無理だけはするな』



ぽんぽんと頭を撫でてくれる仕草に、心が震える。

真剣に悩み続け、仕事への復帰を決めた。

ただしばらくは、極力育児家事に比重を大きくしたいと考えた。

一方で瑛さんは、未就学児のいる両親の勤務形態を変革すると、義父に提案していた。

今も様々なフォロー体制はあるのだが、もっと充実させたいそうだ。

時短やフレックスタイム制などを積極的に導入し、社内に保育園を設置したり、できる限り両親の負担が軽減できる方法を取り入れたいと話していた。

彼の姿勢がなによりも嬉しかった。
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