独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
ちょっと待っていて、と言い残して瑛さんはリビングを出ていく。

再び戻ってきた彼の手には小さな赤色の箱があった。



「開けて」



手渡され、そっと箱を開ける。

煌めくダイヤモンドの指輪に目を見開く。



「これって……」



「彩萌への婚約指輪だ」



上品な輝きを放つ一粒ダイヤのリングと瑛さんの顔を交互に見てしまう。



「婚約って、もう結婚しているし……そもそも婚約指輪はいただいているわ」



「あれは我が家代々のものだろ」



朝霞さんに自宅に送り届けてもらった日、私たちはお互いの誤解を解き、改めて想いを確認しあった。

それから、迷惑をかけたお詫びと感謝の気持ちを込めて、朝霞さんに連絡をした。

朝霞さんは私たちの仲直りをとても喜んでくれた。

その後も、事あるごとに朝霞さんは私たちを気にかけてくれていた。

私と朝霞さんはとても親しくなり、時には義母も交え、食事や買い物に出かけるようになった。

朝霞さんに私が保管していた婚約指輪について謝罪した際には、驚かれた。



『保管してくれてありがとう。彩萌さんが謝る必要はないわよ』



『でも捜されていたんじゃ……』



『実は最初気づいてなかったのよ……瑛に彩萌さんが拾ってくれたって聞いてびっくりしたの。改めて、あのときはぶつかってごめんなさいね』



ずいぶん前に形式上贈られた指輪は、普段身に着けておらず、サイズ直しもしていなかったらしい。

あの日は婚約破棄の話し合いをするため、一応薬指にはめて持ち出したという。

ちなみに大きすぎてゆるい状態だったそうだ。

豪華な指輪なのに、さすが生粋のお嬢様……と遠い目になってしまった。
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