独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
寝室を出ていく後ろ姿を見送り、息を大きく吐き出した。

体を起こそうとするが、あまり力が入らない。

必死に半身を起こしたところで、瑛さんが戻ってきた。

起き上がっている私を見て片眉を上げたが、なにも言わなかった。

水の入ったグラスを手にしたまま、厳しい表情を浮かべている。



なにか、気に入らない真似をした?



手がかかると、呆れている?



体を重ねるのは契約の一部だ。

心を寄せてもいない相手の面倒を見るのは、きっと気が進まないのだろう。



「わ、私……だ、大丈夫なので……」



このまま放っておいてほしいと伝えようと、必死に声を絞り出す。

すると瑛さんが大股で近づいてきた。

無言でグラスに口をつけ、片手で私の後頭部を引き寄せる。

唇が重なり、口腔内に冷たい水がゆっくりと入ってくる。

ごくん、と飲み込んだのを確認すると、もう一度彼は同じ動作を繰り返す。

結局グラスの水がほぼ空になるまで、口移しで飲ませてくれた。



「まだ、必要か?」



「いえ、大丈夫です……!」



それ以外、言えなかった。

喉の渇きも掠れもずいぶん楽にはなったが、口移しなんて初めてで恥ずかしくて、彼を直視できない。



「じゃあ、行くか」



「ど、どこにですか?」



「風呂だ」



答えると同時に、グラスをベッドサイドに置く。

立ち上がった瑛さんは、ふわりと私を横抱きに抱え上げた。



「きゃっ……」



突然の浮遊感に驚く私を意にも介さず、寝室を出ていく。
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