独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「ま、待ってください。歩けますから……っ」



「起き上がるのに、あれだけ時間がかかっていたのに? ……指先も震えていただろ」



「なんで知って……?」



「見てたからな」



しれっと言われ、やるせない気持ちになる。



「とにかく、おろしてください。重いですから」



「これだけ華奢な体つきをしていて、重いわけないだろ」



先ほどまでの情事を彷彿とさせる発言に、体が熱くなる。

なにが楽しいのか、クックッと声を漏らす。



「安心しろ。風呂もきちんと一緒に入れてやる」



「結構です!」



本当にそれだけは勘弁してほしい。

必死に言い募る私の意見はなんとか受理された。

ただし長風呂をするな、など注意事項を幾つか言い渡された。



たった一日。

出会ったばかりの人と、肌を重ねてしまった。

でも……後悔はしていない。

契約結婚も自分が決断したものだ。

なのに、胸の奥がざわめいて落ち着かない。

目を閉じると、抱かれた記憶が鮮明によみがえる。

まるで壊れ物のように優しく触れる指先と甘い声の記憶が、胸を締めつける。



……私まで行方不明になってほしくないから、それだけよ。



無理やり言い聞かせ、大きく吐いた息は熱いシャワーに流れていった。
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