独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
お互いにシャワーを終え、遅めの昼食を口にした。

瑛さんが手早く用意してくれた雑炊は、意外にもとても美味しかった。

私はカレーなどの基本的な料理はなんとか作れるが、手際は良くないし、レパートリーも乏しい。

世界に名を轟かせる御曹司は自炊も得意なのかと、ため息が漏れる。

この人に不得手なものはないのだろうか。


夕方近くになって、自宅に戻ると告げると反対された。



「また具合が悪くなったらどうする? 明日の早朝送るから今日は泊っていけ」



「大丈夫です。明日から仕事ですし、帰ります」



激しい行為を重ねて悪化させたのは自分のくせに、とは口に出せない。

発熱した私に自身の服を貸し与え、下着や必要なスキンケア類までも手早く用意してくれたことは感謝している。

下着については羞恥でいっぱいだったが、今さらもうどうしようもない。



「今後、お前の帰る家はここだけだ。引っ越しは次の金曜日に決まった」



とんでもない発言に思考が一時停止する。



「いつの間に……?」



「お前のシャワー中だ」



「平日は仕事があります」



「荷物は運ばせておくから、お前がなにかする必要はない」



一方的に淡々と告げられ、唖然とする。

どうやら勤務中に引っ越しを済ませておく算段らしい。

退去に関する手続き諸々はこちらで済ませる、と付け加えられ頭が痛くなった。

まだ婚約者という曖昧な立場なのに、諸々の重要な手続きを難なくこなせるなんて、梁瀬家の力を思い知る。
< 48 / 174 >

この作品をシェア

pagetop