独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「開けるぞ」


「え?」


私の反応など構いもせず、彼がドアを勢いよく開けた。

中途半端なドレス姿の私に視線を向け、眉間に皺を寄せる。

鏡ごしに私の背中を見て、すべてを悟ったように大きな息を吐いた。


「なぜ、言わなかった?」


「あ、の……今晩はお疲れでしょうから、手を煩わせるわけには……」


消え入りそうな声で答えると、彼が鋭い眼差しを向ける。


「後ろを向け」


「え?」


「早く」


私の体を強引に反転させ、器用にホックを外していく。

締めつけが緩み、思わずほうっと息を吐く。

ドレスを胸元で押さえていると、背中に温かく柔らかなものが触れた。

驚いて振り返ろうとするも、がっしり腰を掴まれ動けない。

屈んだ彼が、背骨に沿うようにどんどんキスを落としていく。


「……ん……っ」


なんで、口づけるの?


尋ねたいのに、口からは意味をなさない声ばかりが漏れる。


「赤くなってるな……痛むか?」


「へ、平気です」


指先でなぞるように触れられ、鼓動がひとつ大きな音を立てた。

触れられた場所がじんわりと熱をもつ。

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