独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「恋愛下手の彩萌がスピード婚だなんてねえ。梁瀬社長の優秀さは業界内でも折り紙付きで、条件だけを見れば完璧な相手だけど……本当にいいの?」



「いいもなにも、もう決定事項なのよ」



「彩萌は変なところで聞き分けがよすぎるの。逃げようとか思わなかったの?」



アイスコーヒーに口をつけながら、芙美が尋ねる。



「……母の件は正直、助かるから。指輪のこともあるし」



私の返答に芙美は小さく息を吐き、再び質問した。



「朝霞さんの失踪の原因はわかってるの?」



「知らない。聞いたけど、お前には関係ないって」



自嘲気味に答えると、胸が小さく痛んだ。

朝霞さんについて検索後、瑛さんに改めて尋ねたが素っ気なく突き返された。

さらには必要以上に干渉するな、と不機嫌そうに言われた。

夫婦として心を通わせる気はないと宣告されたも同然だった。

体を重ねていても、心の距離は開いたままだ。

情欲が滲んでいた目も優しげに触れた手も、すべては演技か幻だったのだろうか。

でも時折向けられる穏やかな眼差しに、心が揺れ動く。

口調はキツイが朝霞さん以外の話題には丁寧に答えてくれるし、私の戸惑いを受けとめ、なにも無理強いしない。



「梁瀬グループは巨大だし、彩萌を身内のごたごたに巻き込みたくなかったのかもよ? ねえ、ご両親には話したの?」



芙美の問いかけにハッとする。
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