独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「……引っ越しするから、電話で説明したわ」



瑛さんが連絡すると言われたが、私から両親に話したいと頼んだ。

いきなり本家の御曹司から電話がかかってきたうえに、結婚宣言までされたら、母は卒倒してしまう。



「おふたりはなんて?」



「驚いてたけど……認めるというより心配していたわ」



とくに母は梁瀬の血縁なだけあって、状況を素早く理解していた。

二番目の婚約者になったいきさつを伝えると、無理強いや脅迫まがいの行為はなかったかと何度も確認された。

どうしても政略結婚ではなく、契約結婚だとは言えなかった。

私が納得していて、幸せなら賛成だと最後に告げられ、苦い気持ちを抱えて通話を終えた。

私を本家にお披露目した後、瑛さんは朝霞さんとの婚約破棄を世間に公表した。

行方不明の件には触れず、将来のため互いに深く考え、出した結論だとマスコミにコメントしていた。

ネット上ではすでにフリーになった彼の次の婚約者は誰か、などと騒がれている。

ちなみに私との婚約は、時期を見て発表するらしい。



「ご両親に馴れ初めはどう説明したの?」



「瑛さんがうちの会社に視察に来たときに私を見かけてひと目惚れした、って話すように言われたの」



「……無理がありすぎない?」



親友の失礼な物言いに苦笑する。



「私もそう言ったわよ。でもシンデレラストーリーは万人受けするからって」



ちなみに世間に婚約発表する際も、この作り話を披露するつもりらしい。

皮肉な上、用意周到すぎて、もはやため息も出ない。
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