独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
瑛さんのマンションのエントランス前に立ち、高い建物を見上げる。

きちんと外観を確認するのは今日が初めてだ。

都内の一等地、しかも駅直結という好立地の二十階建てのマンションは、梁瀬グループ傘下の会社が開発、販売したものだ。

その最上階すべてが彼の部屋で、持ち物だという。


『新居として、用意されていたんですか……?』



『いや、立地が気に入って購入しただけだ。彩萌がほかの場所がいいなら引っ越す』



引っ越しを言われた際に尋ねると、表情ひとつ変えず告げられ、返す言葉を失った。

このマンションの販売価格はとても高額だったはずだ。

本当に住む世界も、価値観も違うと思い知った瞬間だった。

剪定の行き届いた樹木を外灯が明るく照らしている。

ハナミズキの花が咲き誇る様子がとても美しい。

鍵をかざしもせずオートロックが解除され、重厚な扉が開く。

ずっと繋いだままの私の手を引き、足を進める。

前回送ってもらったときは地下駐車場に直接降りたので、ここを通るのは初めてだ。

グレーと黒で統一された高級感溢れる長い廊下を通り、エレベーターホールへとたどり着く。

エレベーターですら自宅の鍵がないと呼べないという高いセキュリティは、何度目にしても驚く。

エレベーター内でも、彼は変わらず無言だった。

最上階で降りて、私の手を放し、玄関ドアを開ける。



「入って」



「いえ、瑛さんが先に」



「遠慮は不要だと言わなかったか?」



呆れたように言われて、先に玄関に入った。

大理石の敷き詰められた豪華な玄関には大きめのシューズインクローゼットがある。
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