独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
『――年齢も合うし、親戚たちの眼中にないお嬢さんなのもいいわね。一度会いに行きましょう』



『会ってどうする? 俺たちの計画を遂行するため、しばらく身代わりの偽物の婚約者という犠牲になってくれと頼むのか?』



皮肉交じりに告げると、里帆にきつく睨まれた。



『そこはきちんと事情を話してお願いするとか、言い方が悪いけど報酬を支払うとか方法があるでしょ。なんでそんなに上から目線なのよ? 本当に女性への対応が最低ね』



『俺たちの血縁者だぞ? 婚約者なんて頼んだら、目の色を変えて飛びついてくるに決まってる。本気で結婚を迫られるのはごめんだ』



里帆以外の妙齢の女性たちは、穿った目でしか見れない。

里帆はそんな俺に、呆れた目を向けてきた。



『……瑛の気持ちはわかるけど、ほかに方法がないの。一度会ってきちんと事情を説明したらいいじゃない』



珍しく食い下がる里帆に、理由を尋ねた。



『写真と経歴を読んだけど、瑛と彼女は合う気がしたの。女の勘よ。きっといい方向に向かうはずよ』



『真剣に聞いた俺が馬鹿だった、女なんて皆同じだ』



彩萌の調査報告書を突っ返すと、里帆が片眉を上げる。



『私の勘は当たるわよ? じゃあよろしくね』



一方的に告げ、ほどなくして里帆は行方不明になった。

計画通りだが、想定外だったのは渡仏と菓子職人として働いていた件が実家にバレそうになった点だ。

もちろん俺は行き先を知っていたし、連絡も取っていた。
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