独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
からかわれている?



それともお互いの距離を縮めようとしているの?



考え事に気を取られ、眼前の彼が顔を傾けたのに気づかなかった。

さらりと前髪が至近距離で揺れ、伏せられた長いまつ毛に見惚れたときはすでに遅く、唇が塞がれる。


ゆっくりと、まるで私の唇の感触を確かめるような優しいキスに、胸が震える。



なんで、こんなに心が揺さぶられてしまうの?



大きな両手に頬が包み込まれ、口づけがどんどん深くなる。

角度を変え、何度も繰り返されるキスに力が抜けていく。

突然の口づけを拒絶できない。

ううん、拒否したいのかももうわからない。

力の入らない指先で、彼の袖口付近をなんとか掴む。



「……涙目」



キスの合間につぶやかれ、反論をこめて睨む。

フッと眉尻を下げた瑛さんが、目尻に滲む涙を唇で掬う。

柔らかな感触に敏感に反応する私をからかうように、再び口づけてくる。

繰り返されるキスに心が乱れ、追いつかない。



「片づけの続きは……明日でもいい?」



甘い問いかけに、閉じていた目を開く。

妖艶な眼差しに射抜かれ、息を呑んだ。



「……抱くぞ」



「えっ……」



言うが早いか、私を横抱きにして抱え上げる。

浮遊感に驚く私を尻目に、長い足で寝室へと足を進める。
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