独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「ま、待って……! なんで」



「婚約者を抱くのは当然だろ」



躊躇いのない口調に胸が軋む。



やっぱり、義務でしかないの? 



心に浮かんだ疑問に驚く。



私、なにを期待しているの?



慇懃な態度とは裏腹に、ベッドに私を横たえる手はとても優しい。

体がシーツに沈んだ瞬間、呼吸を奪うような激しい口づけが降ってきた。



「ふっ……」


長い指が器用に私の衣類を脱がせていく。

素肌に触れる彼の指先に、体が反応する。

耳を甘噛みされ、首筋にキスで触れられ、思考がどろりと溶けていく。



「――彩萌、俺を見ろ」



過ぎる快感に目を瞑るのを、傲慢なこの人は許さない。

見慣れた冷静な表情が嘘のように、色香の滲む目に射抜かれる。

鎖骨に赤い花を咲かせたあと、胸元に大きな手が触れる。

漏れる甘い吐息は、自分のものとは思えない。

自身の衣類を乱暴に脱ぎすてた彼が覆いかぶさってくる。

高い体温と少し汗ばんだ体に胸がトクトクと速めのリズムを刻む。

繰り返されるキスが気持ちよくて、涙がこぼれ落ちた。



「……可愛いな」



どうして、急にそんな甘い台詞を言うの?


尋ねたいのに、口から洩れるのは言葉にならない声ばかりだ。
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