独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
六月末に、瑛さんと入籍した。


結婚式の準備は順調に進んでいる。

特別なお祝いや、写真を撮りもせず、淡々と婚姻届に署名しただけだった。



目を閉じて、署名捺印をした日を思い出す。



『やっと、俺のものになる』



そう言って、めずらしく頬を緩め、きつく抱きしめた。

普段と違う反応に戸惑っていると、額に唇が柔らかく触れた。



『本当に……いいの?』



思わず尋ねると、彼が訝しげに私の目を覗き込む。



……里帆さんが結婚相手じゃなくて、本当にいいの?



胸に巣食う本音を口にするのが怖い。



『あ、の……後悔しないのかなって』



慌てて取り繕うと、二重の目を細めて真っ直ぐに私を見据える。



『するわけない。お前を望んだのは俺だ。彩萌は後悔するのか?』



『しないわ!』



焦って即答すると、ふわりと彼が眦を下げる。



『これからよろしく、奥さん。それと……きちんと祝えなくて悪い』



『え……?』

 

『祝う気分じゃないかと思っていたから、準備ができていない』



ばつの悪そうな表情を浮かべ、私の肩口に額を押しつける。



『……もしかして私が嫌がるかもしれないって思ったの?』



無言は肯定だ。
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