独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
『お祝いしようって……少しは考えてくれたの?』



『当たり前だ。一生に一度のことだろう』



顔を上げ、自身の口元を大きな手で覆う。

“一生”という言葉がくすぐったくて嬉しかった。

普段と違う仕草と思いやりが嬉しくて、胸が詰まる。

自然と滲んでいく視界に、ほんのり赤くなった耳が映る。



『あなたの妻になれて、嬉しい』



告白できない私の、精一杯の本音を彼の胸に頬を押しつけて伝える。



どうか、困らないで。



受け入れて。



ギュッと瞼を閉じた瞬間、目尻に温かいものが触れた。

唇に落ちる柔らかな感触に恐る恐る目を開く。



『……本当に煽るのが上手いな』



綺麗な目には、激しい情欲が浮かぶ。



『落ち着いたらふたりできちんと祝おう。今は一秒でも早く……抱きたい」



私の唇を啄みながらささやく。

甘い声と仕草に鼓動が暴れ出す。



『可愛い妻を独占したいんだ』



こめかみ、目尻、額とキスの雨が降ってくる。



『婚姻届は一緒に提出できそうなら、しよう』



再び唇が重ねられる。


優しい振る舞いに胸が甘く締めつけられる。



まるで自分が望まれた花嫁だと勘違いしてしまいそうになるくらいに。



『……可愛いな』



ぺろりと私の唇の端を舐め、抱き上げられる。

そのまま寝室に連れていかれ、甘い愛撫に身も心も溺れていく。



『絶対に誰にも渡さない……やっと手に入れた』



途切れていく意識の中で、切なげな声を聞いた気がした。
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