独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
7.悲しい結婚式
婚姻届はともに出せなかったが、正式に受理されたと、後日報告を受けた。

入籍後すぐ、瑛さんは梁瀬本社に栄転になり副社長に就任した。

それに伴い、私も梁瀬本社の総務課に転籍し、就任は結婚式後に決まった。

蔦製菓に就職したての頃は総務課所属だったので、あまり違和感はなかったし不満ももちろんない。

新しい業務を早く覚えなくては、と身が引き締まる。


私たちの結婚については、今も納得していない親族が多いため、一部の上層部以外には知らされていない。

世間には、結婚相手である私の詳細は伏せたまま入籍発表するそうだ。


急激な変化に驚く私に、この人事は梁瀬当主、社長の決定だと瑛さんに教えられた。

仕事を続けたいのなら、職場は変更するよう言われたそうだ。

夫婦の勤務先は別のほうがカモフラージュしやすいはずなのに、と疑問をぶつけるとどうやら蔦製菓の取引に問題が生じているという。

古参の大口顧客から、最近取引の見直しを迫られているそうだ。



『……蔦製菓には時芝家や有力分家が株主として名を連ねている。自身が株主の会社を困らせるような真似をしろと、積極的にけしかけているようだ。お前に火の粉がかからないようにしたい』



異動がどうしても腑に落ちず、瑛さんに何度となく尋ねると、渋々教えてくれた。



『彩萌を気に入らない分家連中の、せめてもの嫌がらせ、悪あがきだ』



眉間に深く皺を寄せた彼が苦々し気に告げる。

まさかの事態に、息が止まった気がした。
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