独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「……好き」



『え?』



「あなたが、好き」



こぼれる涙とともに吐き出してしまった気持ちに、我ながら驚く。

だけどもう、取り返せない。



「契約結婚だし、恋をしたらダメだとわかっていたの。でも気持ちが抑えられなくて……だから、瑛さんの反応が怖くて……」



溜め込んだ感情が、一気に溢れ出す。

切れ切れで、まとまりのない告白を、瑛さんは遮らなかった。

ここが病院の入口だという認識すら一瞬、なくしていた。

こんなところで泣きながら告白するなんて滑稽だし、社会人としてもいただけない。

わかっているのに止まらなかった。



『……悪かった』



耳に届いた謝罪に、肩がビクリと跳ねた。

頭からサッと血の気が引いていく。



ああ、やっぱり迷惑だったんだ。



後継者を産むのは条件だし、感情が入り込む余地はないのに。


恋心を拗らせ、勘違いをして、困らせてしまった。



気にしないで、大丈夫と言うのよ。



気を遣わせてごめんなさいと伝えなければ。



わかっているのに、胸が張り裂けそうに痛くて声が出ない。

うつむくと、みっともない涙が足元に丸い染みをつくっていく。

漏れそうになる嗚咽を必死に堪える。



泣きやみなさい。



この想いは報われないと、わかっていたでしょう?



「ごめん、なさい。愛さない、と言われていたのに……」



やっとの思いで口にした言葉に、どうしようもない涙が交じる。
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