独占愛~冷酷御曹司の甘い誘惑
「違う。ひとりで悩ませて悪かった……ずっと不安だったんじゃないか?」



耳元に聞きなれた低音が響き、ふわりと体が温かな感触に包まれた。

するりとスマートフォンが、指から滑り落ちる。



「……やっと抱きしめられた」



はあ、と荒い息が耳に届く。



「え、瑛さん……?」



思わず顔を上げると、彼は綺麗な二重の目を優しく細める。

長い指が、そっと私の涙を掬って唇に触れる。



「噛むな。俺の大切な妻の体を、傷つけないでくれ」



「なんで、ここ……」



「電話が繋がって、すぐにタクシーに乗った」



どうやら、近隣の病院を片っ端から調べて向かうつもりだったらしい。



「――お前が好きだ」



身じろぎすら許されないほどの真剣な眼差しを向け、ゆっくりと言葉を紡ぐ。



好き?



唐突な告白に瞬きすら忘れそうになる。
 


ちょっと待って、どういう意味?



「……液晶、割れてないか?」



そう言いながら、地面に落としたスマートフォンを片手で拾ってくれる。

差し出されたスマートフォンを機械的に受け取り確認すると、幸いにも細かな傷が少しついただけだった。



「大丈夫、みたい」



「よかったな」



あまりに普通な態度に、さっきの告白は空耳かと考える。



「俺の告白を聞き間違いだと思うなよ?」



私の体に回したままの腕に、力が込められる。

至近距離から目を覗き込まれ、息を呑む。
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