【砂の城】インド未来幻想
「さて、次に異例ではあるが、もう一名の受賞者を発表する」

 続けられた言葉の意味に、シュリーはハッと声の先を見上げた。すっかり諦め消沈する出場者とその親達の、切望の眼差しがシャニ一点に注がれる。ゴクリと息を呑む音が、静まり返った砂原(さはら)に響き渡った。

「優勝したガルダ村のシュリー。彼女の外見はもちろん、舞踊も殊更(ことさら)に優れ、申し分のない受賞であった。が、これから選ばれるもう一名は、どちらも大変美麗であったのだが……惜しくも本来の力を存分に発揮出来なかった。ならば今一度、我が城で彼女にチャンスを与えたく、特別に賞をと願うものである! 皆……異論はないか?」

 ぽつぽつと生まれ出でた同意の拍手が、瞬く間に溢れて洪水のような轟音と化した。

 ナーギニーの舞踊を見た者ならば、その名は()うに予測出来ただろう。完璧に踊れなかった者と言ったら、少なくともあのラクシャシニーと呼ばれた少女とナーギニーの二人のみなのだ。けれど当のナーギニーは、自分の名が呼ばれることなど思うに及ばなかった。シュリーは自分の期待が叶うことを祈って、ナーギニーの手を強く握り、その身を震わせた。


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