【砂の城】インド未来幻想
 ヤムナ河はエターワという街の先でチャンバルという川と交わり、更にヤムナとしての流れが続いていく。一向はその合流地点に差しかかろうとしていた。かつて豊富な水を湛えた地であったからだろうか。依然地下に水流を保っているのか、規模は小さいながらも立派に『ジャングル』と呼べる木々の繁った領域が在った。蝙蝠(こうもり)(ふくろう)が時々葉擦(はず)れの音を立てる。そのような黒々とした闇を右手に、一行は変わらぬ調子で過ぎ去ろうとした。が、こんもりとした森の底辺で、ギラギラと光る鋭い獣の眼が幾つもこちらを見据えていることを、繊細なナーギニーは見逃さなかった。

「ひっ……」

 胸から湧き上がった恐怖は、知らず少女に小さな悲鳴を洩らさせた。

「ナーギニー?」

 睡魔から解き放たれたシュリーが、眠気(ねむけ)(まなこ)をこすりながら首をもたげた。ナーギニーの蒼褪めた表情と、その指差す方角へ顔を向けるや、彼女の(おもて)もすっと血の気が引いた。


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