【砂の城】インド未来幻想
「ううん、今度はシュリーが眠っていて。この手綱を握っていれば良いのでしょ? ちゃんとやってみせるから、シュリーもどうか休んでいて」

 そう言いながら自分のラクダをシュリーに寄せ、二頭を操る手綱に左手を伸ばす。こんな芸当まで出来るようになったことには驚いたが、反面安心して全てを任せる気にもなれた。

「ありがとう、ナーギニー。それじゃほんのちょっと眠らせてもらうわね。何か遭ったらすぐに起こしてちょうだい」

「ほんのちょっとだなんて心配しないで。……シュリー、おやすみなさい」

 自信を乗せたナーギニーの言葉には、もはや「大丈夫? ナーギニー」という心配は無用に思われた。

「うん……おやすみなさい、ナーギニー」

 ふさふさの柔らかい毛で覆われた眼下の(コブ)は、とても肌触りの良い枕のようだ。それに頬を預けたシュリーの瞳は、もうまどろむように潤んでいた――。


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