【砂の城】インド未来幻想
「いいこと思いついたわ。こうしましょ。まず……通行証にはわたしの名前が載っているだけだから、あなたはわたしの振りをすればいい。そしてわたしは――」

 次の句を継ぐ前に、ナーギニーは何を語られるのか理解していた。不安に駆られ涙顔に崩れた少女は、「もう言わないで」とすがるように、思わずシュリーにしがみついた。シュリーは柔らかく受け止めて、優しく涙を(ぬぐ)ってやったが、再び淡々とした調子で続きを話し始める。

「……わたしは、とりあえずこの場は引き下がるわ。お願い、泣かないで。あなたがいかに「わたし」になりきれるかで、わたしの運命も決まるのよ――って、そんな大袈裟なことでもないかもしれないけれど。そう思えば頑張れるでしょ? 代わりにあのマントを貸してちょうだい。大丈夫よ。上手くやって、必ず潜り込んでみせるから。……そう、いい子ね」

 必死に涙を(こら)え頷くナーギニーへ、シュリーは慈しみの眼差しを向けた。矢継ぎ早にこれからやるべきことを伝える。



 一、「シュリー」としてシュリーと別れ、迅速に入城すること。

 二、シャニとの面会が済んでからはナーギニーに戻り、シュリーについて(たず)ねられた際には「ドールに襲われてしまった」と告げること。

 三、城内で再会を果たしても決して他言はせず、真夜中のみ密会すること。





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