【砂の城】インド未来幻想
「危ないっっ!!」

 けれどその声と音に反応し、振り向いたシュリーの顔も身体も、突如溢れ出た金色の光に閉ざされてしまった。眩しさに思わず(つむ)った瞳が、慌てたように瞬いて辺りを見回す。やっと視界が機能した時にはもう、シュリーの姿は跡形もなく消えていた。

「あ……あっ……!」

 ナーギニーの全身を、この世の物とは思えない程の深い悲しみが一気に流れ落ちていった。意識は朦朧(もうろう)彷徨(さまよ)い、地平線の一文字(いちもんじ)が蝶の羽の如くはためき始める。砂に膝を突き、四つん這いに支える両手を見つめたが、彼女は気を失ったりはしなかった。潜り込もうとする心の中で、(かす)かにシュリーの声を聞いたからだ。

 ――心配しないで。わたしは生きている――。

 ――シュリー……?

 後ろから二の腕を掴まれ、半ば力づくで立たされたナーギニーは、正気を取り戻しキッと使者を睨みつけた。生まれて初めて他人へ見せた「抵抗」の意志表示であった。

 ――シュリー、必ず生きていてね。

 再び促された金属板の扉へ進む。箱状のその中はひんやりとして薄暗かったが、シュリーの無事を信じる少女の眼は、闇に侵されることのない力強い光を放っていた――。


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