【砂の城】インド未来幻想
[流動]
ナーギニーの入れられた箱状の金属は、実際には遠い過去に良く見掛けられた四輪駆動の車輌であった。
開かれた扉は後部座席の物で、其処から乗り込んだナーギニーの前方、運転席と助手席には使者の二人が席に着いた。突然足元から振動と重低音が響き、少女は思わず耳を塞ぎ身を強張らせた。いきなり自分を囲う物が一気に砂の丘を登り出した時には、ナーギニーの心臓はあわや止まるかと思う程の驚きを感じていた。
この時代、砂漠を移動する手段はもはや、ラクダ・馬、時に稀少な象がお目見えする程度で、そのような生き物に頼る他はない。もちろんナーギニーもこの走る箱が生きているとはさすがに思わなかった。砂の城を築いたシャニの世界には、アグラの街には存在しない、とてつもない技術や設備があるのだろう――ナーギニーはただそのように想像して、自身を納得させるしかなかった。
三人を乗せたジープはやがて、砂だらけの地平線から現れた静かな街へ吸い込まれていった。古から『アラハバード』と呼ばれるその街は、以前であれば中核都市の規模であったが、今は砂の城の衛星基地といったひっそりとした佇まいだ。
開かれた扉は後部座席の物で、其処から乗り込んだナーギニーの前方、運転席と助手席には使者の二人が席に着いた。突然足元から振動と重低音が響き、少女は思わず耳を塞ぎ身を強張らせた。いきなり自分を囲う物が一気に砂の丘を登り出した時には、ナーギニーの心臓はあわや止まるかと思う程の驚きを感じていた。
この時代、砂漠を移動する手段はもはや、ラクダ・馬、時に稀少な象がお目見えする程度で、そのような生き物に頼る他はない。もちろんナーギニーもこの走る箱が生きているとはさすがに思わなかった。砂の城を築いたシャニの世界には、アグラの街には存在しない、とてつもない技術や設備があるのだろう――ナーギニーはただそのように想像して、自身を納得させるしかなかった。
三人を乗せたジープはやがて、砂だらけの地平線から現れた静かな街へ吸い込まれていった。古から『アラハバード』と呼ばれるその街は、以前であれば中核都市の規模であったが、今は砂の城の衛星基地といったひっそりとした佇まいだ。