【砂の城】インド未来幻想
 少女は軽く首を(かし)げ、水面(みなも)に薄っすらと映る自分の姿を見下ろした。恐る恐る差し伸べたかよわき指先が、膨大な水を内包するその膜を破り、水紋という「影響」を少なからず与えた瞬間を知る。冷たい水はまるで生き物のようだった。まるで……此処へ導くが如く自分達を沈めた砂のように。

 砂塵に隠された地下空洞への入口と、城へ(いざな)う長い河。シュリーはこの街に辿り着き、この「秘密の扉」を見つけ、いつか砂の城へ到ることが出来るのだろうか? いつか……自分が城に留められている間に。

 何処からか零れ入る微かな光の筋が、鍾乳洞のドレープと細かな水泡(みなわ)をほんのりと照らす。水達の作り出すあたかも神秘的な百弦琴(サントゥール)の音色に包まれて、ナーギニーは瞼を閉じ、両掌を合わせ静かに女神に祈りを捧げた。


 ――どうか……どうか、シュリーを無事に届けてくださいますように……――。


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