【砂の城】インド未来幻想
ナーギニーは大通りの端に停められた迎えと同型のジープに乗せられて、今度は城を目指した。半分ほど開かれた窓から、幾らか冷たくなった風が髪を掻き乱す。頬に当たる爽やかな流れは、夕焼けに点火されたような火照った心を落ち着かせてくれる心地の良いものであった。
車輌は城を左手に見て南下し、白大理石の宮殿へ向かっていた。徐々に黒大理石の王宮が白い対宮へと重なり消えてゆく。さながら白宮の背後に潜む影のように――反面、近付くにつれ大きくなる白大理石は、鮮やかな夕陽に照らされ染められ、反射した光が複雑な色彩を醸し出した。そのような美しい背景を楽しむように、檸檬色や黄緑の小さな生き物が空を飛び交って見える。が、それらがインコやオウムといった「鳥」であることに気付くには、少女にはそれなりに時間が必要だった。
夜の戸帳が降り始めている所為か、街並には数人の人影が見受けられるだけだ。男達が野菜を荷台に乗せ、車を押している横を通り過ぎる。皆不思議と会話もせずに、黙々と歩き続けている。ジープが接触しそうなほど近くに寄っても何の反応も示さず、此処が『砂の城』と呼ばれても仕方のないことが、ナーギニーにも少しずつ分かり始めた気がした。
車輌は城を左手に見て南下し、白大理石の宮殿へ向かっていた。徐々に黒大理石の王宮が白い対宮へと重なり消えてゆく。さながら白宮の背後に潜む影のように――反面、近付くにつれ大きくなる白大理石は、鮮やかな夕陽に照らされ染められ、反射した光が複雑な色彩を醸し出した。そのような美しい背景を楽しむように、檸檬色や黄緑の小さな生き物が空を飛び交って見える。が、それらがインコやオウムといった「鳥」であることに気付くには、少女にはそれなりに時間が必要だった。
夜の戸帳が降り始めている所為か、街並には数人の人影が見受けられるだけだ。男達が野菜を荷台に乗せ、車を押している横を通り過ぎる。皆不思議と会話もせずに、黙々と歩き続けている。ジープが接触しそうなほど近くに寄っても何の反応も示さず、此処が『砂の城』と呼ばれても仕方のないことが、ナーギニーにも少しずつ分かり始めた気がした。