【砂の城】インド未来幻想
[越夜]
白亜の宮殿は次第に宵闇に溶け、藍色の大気の中へ沈み始めた。しかしその入口は大きな魔獣が餌を狙うかのように、金色の口腔をぽっかりと開けて少女を待ち構えていた。ナーギニーは唇を引き締め、自分を押しやるように一歩を踏み出す。刹那冷たさを含んだ外気が逃げ去り、蜂蜜のようにねっとりとした暖かい空気が、彼女を「捕らえた」とばかりに包み込んだ。煌びやかで贅沢な、貪欲な色と匂いの隠された独占的な空間――。
辺りは静まり返り、人の気配も感じられなかった。が、全ての照明はナーギニーを迎える為だけに輝いていた。円形に広がった吹き抜けの大広間には、其処で舞う少女を愉しむシャニの為に、立派な玉座が設えられている。それを囲うように、均等に据えられた幾重にも続く柱の向こうには、碧い扉が扇状に並び、おそらくその内部には先に到着した妾妃候補者達が留められているものと思われた。
辺りは静まり返り、人の気配も感じられなかった。が、全ての照明はナーギニーを迎える為だけに輝いていた。円形に広がった吹き抜けの大広間には、其処で舞う少女を愉しむシャニの為に、立派な玉座が設えられている。それを囲うように、均等に据えられた幾重にも続く柱の向こうには、碧い扉が扇状に並び、おそらくその内部には先に到着した妾妃候補者達が留められているものと思われた。