【砂の城】インド未来幻想
 一番端の部屋の為、ナーギニーは最後尾となった。もしも此処にシュリーが居たら、彼女は隣室であっただろうか? この移動も仲良く並んで楽しい時間となっただろうか? 目の前で黙々と歩く少女達の背中を見つめながら、彼女は胸元の衣の(ひだ)をそっと握り締めた。

 階段を降り、一階の集団と合流する。白宮の正面扉から外へ出された行列は、東から反時計回りに外壁を進み、宮殿の背後――ヤムナ河上に架けられた橋のたもとに導かれた。白大理石の向こうから徐々に現れた黒大理石の王宮が視界を侵略する。空の蒼さも消し去られる程に黒々と輝く漆黒の城は、畏怖すらも伴い見る者を圧倒した。

 白宮を美しく優雅な白鳥に例えるならば、黒宮はあたかも気高く雄々しい黒鳥のようだ。

 橋は見事にその真中で白から黒へと切り替えられていた。

 黒大理石の敷地に踏み込んだ途端、暖かな陽の温度が数度下がった気持ちすらしてしまう。渡りきった黒い基壇の床は素足に冷たく感じられた。


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