【砂の城】インド未来幻想
 白宮と同様外壁を巡り、回り込んだ正面の大扉は既に開かれていた。

 が、内部は吹き抜けではなく、人が余裕ですれ違える程度の廊下が一直線に貫かれていた。両端には幾つもの小部屋らしき扉が並んでいる。少女達の一団は案内されるがままに、その通路を奥まで進み、右手の階段を二階まで登った。折り返された階段をもう一階分越えて、先に見えたアーチをくぐれば其処は王宮の屋上であった。

 中央の大きな丸屋根は守られるように、四つの小楼(チャハトリ)に囲まれている。上空の風がそれらをかいくぐりながら、彼女達の髪を悪戯(イタズラ)に巻き上げる。偽物の空は見上げてもずっと遥かまで碧く、眼下を彩る牧草地の緑の海は、匂い立ちそうに鮮やかだった。

 そうして振り向いた南には、白大理石の丸屋根が陽に(さら)されて(まばゆ)く輝いていた。背景は密集する小さな住居の凹凸(おうとつ)だ。見えなくとも路地のあちこちでは、沢山の人々が働いているに違いない。

 屋上に連れてこられた意味はすぐに判明した。二人の侍女が丸屋根に据えられた扉を開く。再び整列した少女達は、沈黙のまま順に中へ消えてゆく。決められた通り最後はナーギニーの番だった。内部は思った以上に広く、天井は丸みを帯びて高く明るい。内壁は黒大理石ではなく、白宮と同様の白大理石であるからだ。


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