【砂の城】インド未来幻想
 全員がシャニの放つ力強い存在に魅了され、憧憬(しょうけい)(まなこ)を向け微笑んでいた。全員の――いや、ナーギニーを除いた全員の、だ。

 数名の給仕が準備に取りかかろうと少女達の背後に立ち、まずは目の前の器に温かなスープが注がれた。再びシャニの勧める声に促されて、皆がスプーンを手に取ったその時であった。

「遅くなりまして、申し訳ございません」

 入室した扉の外から、ふいに現れる澄んだ声音(こわおと)

 全員の瞳が、そしてナーギニーのまどかな双眸が、映し出した眉目(みめ)麗しきその姿は――



 ――闇夜に月光の恵みを与えてくれた、シヴァと名付けた青年だった――。



[註1]インドのリス:タージ=マハルやアグラ城などでも気軽に見掛けられますが、狂犬病を保菌していることもあるそうなので、ご旅行の際にはお気を付けください。


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