【砂の城】インド未来幻想
 このように不気味さを(かも)し出す外の世界も、選良披露の予選を兼ねる祭りの開催で、一週間後には活気に満ち溢れることだろう。そして州代表となれば――未来が決まる選良披露が待っている。彼女にとって全てはあと二週間程の時間でしかなかった。

 しかし執拗とも思えるほど完全隔離され育て上げられた少女が、果たして王宮という未知の環境に上手く順ずることが出来るのか――小さな弧を描く白い肩に()しかかる、大きな不安をひしひしと感じながら、ナーギニーは溜息混じりの息を吐いた。

「シヴァ様……」

 頼る者は神のみの現代(いま)、彼女ですら破壊を求めるのか?

 時代の流れは、砂のように弱い風にさえ吹き飛ばされ、移ろいながらもしっかりと砂紋という結果を刻み、ゆっくりと形を変えつつ方角を『砂の城』へと向けていた。

 そして神のみぞ知る偉大な力は、見えざる触手に絡み取られ、複雑な螺旋(らせん)を描きながら『二人』の(もと)へと既に放たれていた――。


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