【砂の城】インド未来幻想
陽が暮れて小一時間が経った頃、昨夜と同様に侍女が夕食を運び、独り静かな夕餉となった。しかし昼食を無理矢理詰め込んだ胃は、それを受け入れてはくれなかった。ファンの回る音以外、何物も奏でることのない静謐な空間。あたかも今まで暮らしてきた我が家での「何もさせてもらえない時間」に似ていた。こんな時は何度も繰り返し目通しした本をめくるか、外の砂に煙るタージ=マハルを眺めたものだった。が、今はそのタージに勝るとも劣らない宮殿の一室に閉じ込められ……見える物は尖塔の一つのみだ。
それでもその先にアグラの街では見られなかった、星の瞬きが溢れているに違いない。ナーギニーは闇夜のバルコニーに身を移した。暗がりにぼおっと光る白大理石の欄干。その上に手を添えて、東南の景色を黒々と遮る尖塔の上を見上げてみた。
濃紺色の夜空に小さな小さな光の粒が煌いている。それはまるで撒き散らした砂粒のように、一面に幾千幾万と存在していた。が、其処から少し視線を戻した尖塔の上部に、星よりも大きな光源を見つけた。光は定期的に明滅を繰り返し、まるでナーギニーに気付いてくれと訴えているようだった。
それでもその先にアグラの街では見られなかった、星の瞬きが溢れているに違いない。ナーギニーは闇夜のバルコニーに身を移した。暗がりにぼおっと光る白大理石の欄干。その上に手を添えて、東南の景色を黒々と遮る尖塔の上を見上げてみた。
濃紺色の夜空に小さな小さな光の粒が煌いている。それはまるで撒き散らした砂粒のように、一面に幾千幾万と存在していた。が、其処から少し視線を戻した尖塔の上部に、星よりも大きな光源を見つけた。光は定期的に明滅を繰り返し、まるでナーギニーに気付いてくれと訴えているようだった。