【砂の城】インド未来幻想
『ナーギニー……(うたげ)の席では大変失礼をしてしまいました。今まで自分の素性を隠してきたことも含め、深くお詫びを申し上げます。それから……シュリーという同行の少女は君の友人だったと思うのだけど……今回のこと、心から……ご冥福をお祈り致します』

「あ……」

 思わずナーギニーの唇から驚きと感嘆を含んだ一言が流れ落ちた。ナーガラージャの(もと)から聞こえてくるイシャーナの言葉には、芯からの贖罪の気持ちとシュリーへの偽りない祈りが捧げられていたからだ。

 そしてあの墓廟で初めて出逢った夜、自分が小さく呟いたシュリーの名を覚えていてくれたこと――それこそがシュリーの存在を夢でも幻でもなかったのだと証明してくれているようで、孤独に(さいな)まれていた少女にはたまらなく嬉しく思えた。

「温かなお心遣いを誠にありがとうございます、イシャーナ様。あの……再びお目に掛かれましたこと……」

 ――幸せに存じます。

 ナーギニーは込み上げる喜びを伝えたかった。しかしその時何かがそれを(はば)んだ。もし自分の想いをぶつけてしまったら――もう引き返せないのかもしれない……そのような不安が恐怖となり、彼女の言葉を刹那に途切れさせていた――。


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