【砂の城】インド未来幻想
『それなら良かった。もし不都合があったなら、侍女達に伝えてくれたら大丈夫だよ。彼女達は必要以上のことはしないけど、イレギュラーな事態に対応出来ない訳でもないから』

「それはどういう……?」

 微妙に含みのある言い方に、少女はゆっくりと首を(かし)げた。

『僕にも分からない……侍女だけでなく、この地で働く全ての民に「自我」を感じたことがないんだ。でも彼らが意思を持たないとも思えない。()いたことに答えられない訳でもないし、その場で返事の出来ない場合でも、翌日にはしっかりと答えを返してくる。逆を言えば性急な用でない限り、対応はされるということなんだ』

「は、い……」

 自分だけでなく疑問を持つ人が此処に居る。だがもう十何年もの歳月を経たイシャーナでさえ分からないのだ。この謎を解くのは難解であること、ただそれだけが判明した。


< 177 / 270 >

この作品をシェア

pagetop