【砂の城】インド未来幻想
 インドといえば祭りのメッカであるが、それは遥か(いにしえ)の出来事となった。今はもうそんな出費を補える市井(しせい)は少なく、インド北部ではこのアグラを除いたら、片手の指で足りてしまう。その殆どがヒンドゥ最大にして最強たる救世主シヴァ神への礼節を尽くした祝祭だが、遠い過去の華やかで(あで)やかな出し物は、さすがに多くは見られなかった。

 この二十年に一度の大祭が、ナーギニーの出場する寵姫(ちょうき)選良披露の年と重なったのは、単なる偶然だったのだろうか。

 州代表は通常ならば、容姿・外見を吟味するのみで決められる。が、今年に限っては祭りの余興も兼ね、舞台に立たせた寵姫候補の少女達に、舞踊の美しさを競わせることになった。タージ=マハルの正面に配された空間で、祭りと霊廟の見学に数年振りの来訪を果たす……シャニの目の前でだ。

 めったにないクルーラローチャナ一族の訪問を期して、大々的な改築・改装が行なわれたタージ=マハルは、誇らしい姿を彼らに見せつけることだろう。インド一の――(いな)、世界一の藩王シャニに感嘆の溜息を零させなければならない。


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