【砂の城】インド未来幻想
食事の後は予定通り、白宮の大広間にてサリーの仕立てが催された。長いポールに何重にも巻かれた布地のロールが、大理石のフロアーに所狭しと並べられている。それらには全て精密な刺繍や透かし織が施され、アグラの祭りで見たどのサリーよりも遥かに美しく豪奢であった。
少女達はおのおの布地を広げては肩に掛け、円柱に立てられた姿見の前で嬉々としている。シャニはそんな彼女達の様子を見守りながら、玉座で独り悦に入っていたが、数人の少女に選んでほしいとねだられて手を引かれ、満面の笑顔で布の山に歩み寄った。
そうした賑やかな中心から一番遠い端の布地に、ナーギニーはいつしか手を伸ばしていた。今まで一度も纏ったことのない濃紺のサリー。それが気になったのは、共に織り込まれた金糸の模様が、昨夜見上げた夜空の流星を思い出させたからだ――イシャーナとの甘いひととき――もう一度会いたい……近くに居た侍女がスルスルと布を引き出して、鏡の前でナーギニーの肩に垂らしてくれた。と、突然夜空が現れて、箒星が流されたような不思議な感覚が目の前に広がる。まるで時が自分だけを連れ去って、一瞬の内に遡ってくれたのかとナーギニーは息を呑んだ。
が、そのような奇跡はある筈もなく、彼女を瞬く間に現実に引き戻したのは、あの低い王の声であった。
少女達はおのおの布地を広げては肩に掛け、円柱に立てられた姿見の前で嬉々としている。シャニはそんな彼女達の様子を見守りながら、玉座で独り悦に入っていたが、数人の少女に選んでほしいとねだられて手を引かれ、満面の笑顔で布の山に歩み寄った。
そうした賑やかな中心から一番遠い端の布地に、ナーギニーはいつしか手を伸ばしていた。今まで一度も纏ったことのない濃紺のサリー。それが気になったのは、共に織り込まれた金糸の模様が、昨夜見上げた夜空の流星を思い出させたからだ――イシャーナとの甘いひととき――もう一度会いたい……近くに居た侍女がスルスルと布を引き出して、鏡の前でナーギニーの肩に垂らしてくれた。と、突然夜空が現れて、箒星が流されたような不思議な感覚が目の前に広がる。まるで時が自分だけを連れ去って、一瞬の内に遡ってくれたのかとナーギニーは息を呑んだ。
が、そのような奇跡はある筈もなく、彼女を瞬く間に現実に引き戻したのは、あの低い王の声であった。