【砂の城】インド未来幻想
「優しい動物だ、危害はない。さて、出発するよ」

 先頭のゾウに乗り込んだシャニは、最後尾のゾウまで聞こえる大声を上げて、ようやく一行は街へ繰り出した。

 ナーギニーはいつもの通り行列の終わりに付いた為、最後の六頭目に乗せられることとなった。幸い残ったのは三人となったので、後方のどちらでも自由に選べ、もちろんイシャーナの望んだ進行方向左手に座した。

 ゆっくりと揺れる輿(こし)に合わせて、上半身が大きく振れる。ゾウの背はとても高く、遠くまで見渡せる景色が、振動に合わせて振り子のようになびく。が、不思議と悪い気持ちはしなかった。やがて城内を出て大通りを南下し、ゾウが高らかと鳴き声を(とどろ)かせるや、辺りは一斉に静寂に包まれた。


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