【砂の城】インド未来幻想
道を横断する人々は慌ただしく左右に寄り、一列に並んで深い礼を捧げる。通りに面した建物の二階や三階から、雨のように花びらが注がれた。遠く何処からか手を打ち鳴らす音が生まれ、静けさに満ちた波間は一瞬の内に喝采の渦と化した。少女達を見つめる数多の面には、この国では今まで見たことのなかった温かな歓迎の微笑みが添えられていた。
まるで感情を見せなかった民に、初めて笑顔が宿された――それは永久に見ることの叶わない月の裏側が、あたかもくるりと振り向いたかの如き奇跡にも思えた――これこそが彼らの本来の姿なのか……戸惑いながらもそうであってほしいと願いつつ、ナーギニーは他の少女達に倣い、歓迎の拍手に手を振り応えた。
沿道はパレードを見送る群衆で埋め尽くされていたが、建物の隙間から時折掠める風景を眺めて、イシャーナが左手に着席を勧めた理由はすぐに判明した。遠くに見える白宮と、東に進むにつれ現れ始めた黒宮のコントラストが美しい。それは空がどんなに青くとも、この地へ辿り着いたあの夕暮れを思い起こさせた。緊張と不安で押し潰されそうだった自分……けれどまだシヴァと呼んでいたイシャーナに、再び会える希望で打ち震えていたあの頃――。
まるで感情を見せなかった民に、初めて笑顔が宿された――それは永久に見ることの叶わない月の裏側が、あたかもくるりと振り向いたかの如き奇跡にも思えた――これこそが彼らの本来の姿なのか……戸惑いながらもそうであってほしいと願いつつ、ナーギニーは他の少女達に倣い、歓迎の拍手に手を振り応えた。
沿道はパレードを見送る群衆で埋め尽くされていたが、建物の隙間から時折掠める風景を眺めて、イシャーナが左手に着席を勧めた理由はすぐに判明した。遠くに見える白宮と、東に進むにつれ現れ始めた黒宮のコントラストが美しい。それは空がどんなに青くとも、この地へ辿り着いたあの夕暮れを思い起こさせた。緊張と不安で押し潰されそうだった自分……けれどまだシヴァと呼んでいたイシャーナに、再び会える希望で打ち震えていたあの頃――。