【砂の城】インド未来幻想
 しかして東端まで進んだ一行は、街角を左折し北上を始める。何処までも拍手と歓声と花びらのシャワーは続いていた。道の折れる左側の館は、白塗りの壁が三階まで続き、どの窓辺からも沢山の人が手を振っていた。ナーギニーのゾウが最後にその角を回り込んだ時、鮮やかな軌跡を描きながら、何かが彼女の膝の上に落ちてきた。舞い散る花びらに紛れて投げ渡されたのは、ジャスミンを編み込んだ真白い首飾り。驚いて見上げた視界に純白の鳩が幾重にも飛び交う。曲がり切る間際にやっと開けた羽ばたきの先には、久し振りに見ることの出来た、イシャーナの眩しい微笑があった――。







[註1]デーヴァナーガリー文字:ヒンディー語などに使われる字体。横に通ったラインの上下に、記号のような字が連なるので、洗濯物の掛けられた物干し竿などに例えられます。


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