【砂の城】インド未来幻想

[証明]

「本日は……あの……沢山の贈り物を、本当にありがとうございました!」

 煌びやかなゾウの行進は、王宮を正面としたこの地の最北で左折し帰還となった。パンジャビ・ドレスの上着は緩やかな為、ナーギニーは誰にも見つからぬよう、内側にジャスミンの首飾りを隠した。王の見送り後早々に自室へ戻り、テーブルにそれを広げるや、優雅で甘美な香りが辺りを取り巻いた。

 そうして豊かな花の香に酔いながら、胸ポケットの封筒にしまわれたサファイアの指輪をそっと取り出す。夕食のノックが訪れるまでは、首飾りと指輪と手紙を順々に眺めながら、いつの間にか時が過ぎ去っていた。

 ワゴンと共にやってきたシュリーは、ナーギニーのひた隠そうとする悦びに気付いたようだった。「後で根掘り葉掘り聞かせてもらうわよ」そんな魅惑の目配せを送り、嬉しそうに退室していった。

『喜んでもらえて良かった。でも……迷惑ではなかったかい? どちらもシャニ様に知れたら大事(おおごと)であるには違いないから……』

 夕食後ベランダに立って、すぐに現れたナーガラージャへ深く捧げたお礼の返事は、毎夜の通りイシャーナの声で戻ってきた。が、それには悪戯(イタズラ)が過ぎたという反省が込められ、少々遠慮がちに沈んでいた。


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