【砂の城】インド未来幻想
 シュリーの心を探る眼差しに、ナーギニーの頬は熱を放ち染められてしまった。けれど瞬く間に視線を逸らしてしまう。イシャーナが伝えられなかった言葉の続きと、その後に紡がれた家族についての質問は、幾ら恋しても叶わぬことを突きつけられたように感じたからだ。そしてイシャーナ自身も――

「……イシャーナ様のお母様は、シャニ様から戴くお薬で生き永らえていらっしゃる身……私がその邪魔をするようなことは……」

「薬? ご病気なの? ……何か匂うわね……」

「シュリー?」

 艶《つや》やかな唇に指を添えたシュリーの横顔は、何かを考え巡らせているようだった。

「まぁ、難しいことは気にしないで、とりあえずあなたの眠る時間を減らしたくないわ。早速刺繍を始めましょう」

 気を取り直すように明るい声を上げて、シュリーは裁縫道具を取りに席を立った。ナーギニーは(しお)れ始めたジャスミンの首飾りを大切そうに抱き上げ、指輪の収めた封筒と共に、寝台の枕元にそっと並べた――。


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