【砂の城】インド未来幻想
 一族が訪れるとの情報が流れてから、街はまるで別人のように変わり、少女の母親も例外ではなかった。彼女は遠くジャイプールの絹商人に渡りを付け、格安で手に入れたそれを二晩で仕上げた。品質も良く光沢も輝かしいが、胸と腰の辺りのみ先を通さず、以外は全て身体の線が見通せる、如何(いか)にもシャニに()びている風がある。流石に宝飾までは新調出来なかったので、今ではもう数少なくなった曽祖母の形見を貰い受けることになった。

 少女の美しさはそれらによって益々惹き立つであろうが、何とも嫣然(えんぜん)とした装いに、外界への拒絶反応は増大せざるを得なかった。

 ナーギニーはその衣装を手に取れぬほど苦痛を感じたが、切ない瞳で訴えるのみでは訂正される筈もなかった。ウッタルプラディッシュ州の若い娘を持つ親達は、何処(いずこ)も皆この調子だ。現に容姿に自信のない娘でも、妖艶な衣装と舞踊の技術で「あの(、、)シャニ様を魅了してごらんなさい」と、大会への志願者はいつの間にやら数百にも及んだ。


< 21 / 270 >

この作品をシェア

pagetop