【砂の城】インド未来幻想
 仕方なしにある程度の振るい落としがなされ、厳選された七十人の少女に絞られた。もちろんナーギニーも余裕で含まれている。初日は一族到着を皮切りに二時間、二日目と最終日は午前と陽の和らぐ午後四時より三時間を取り、一日合計六時間となる。ナーギニーは抽選の結果二日目の後半に順を得たが、祭り初日当日となっても、覚悟の定まる余裕などありもしない。

 開催時刻間近の頃、清掃を終えた兄がようやく帰宅をし、ナーギニーを除く家族全員がにわかに活気づき出した。予選通過に意気込みを見せつつ出立の準備がなされていく。

 母親は自分のことなどお構いなしに、ナーギニーの支度に念を入れた。色白の肌に黒く大きな瞳と小さく纏まった紅い唇、それらを更に強調させた化粧に、ヒンドゥの結婚式を思わせる金糸の刺繍が刺された真紅のサリー。飾ることの出来る全ての部位には黄金の装飾が施され、細身のナーギニーにとっては、それらは重いようにも感じられた。漆黒の長く艶のある、堅く編まれた()()(しん)のような髪は美しくたゆたい、後ろ姿さえも神々(こうごう)しい(まばゆ)さを発したが、その揺らぎはあたかも彼女の心の奥底を示しているようだ。


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