【砂の城】インド未来幻想
[権化]
「ナーギニー?」
夕暮れ前には雨は止んでいた。照らされた瑞々しい風景が、朱色に染まって闇に沈む。バルコニーの手すりに並んだ透明な水玉は、次第にマンダリン・ガーネットの輝きを帯び、やがてブルー・スター・サファイアの碧い色と溶け合い、涙のように落ちていった。
夕食後現れたシュリーは、佇む少女を不思議そうに見つめた。その表情が溢れんばかりにニコニコと微笑んでいたからだ。首を傾 げながらゆっくりと近付いたシュリーに、ナーギニーは後ろに回していた両手を勢い良く差し伸べた。
「あのっ……シュリー、これ……使ってはもらえないかしら……?」
目の前に現れた封筒に、瞳を見開き丸くするシュリー。驚きつつも同じく両手で受け取り、中身を取り出して「あっ!」と声を上げた。
「ナーギニーったら……いつの間に完成させたの!? それも素晴らしい仕上がりだわ……でも、使ってって……?」
「まだまだ未熟で恥ずかしいけれど……初めての作品は、シュリーに使ってほしいと思って……」
はにかみ俯いたナーギニーの口元は、それでも嬉しそうに弧を描いていた。柔らかみのある白い綿布は吸水性も良く、ハンカチーフとして使うには最適だ。しかし上質な絹糸をふんだんに用いた繊細な刺繍絵は、額に入れて壁に飾っても十分な程に芸術的であった。
夕暮れ前には雨は止んでいた。照らされた瑞々しい風景が、朱色に染まって闇に沈む。バルコニーの手すりに並んだ透明な水玉は、次第にマンダリン・ガーネットの輝きを帯び、やがてブルー・スター・サファイアの碧い色と溶け合い、涙のように落ちていった。
夕食後現れたシュリーは、佇む少女を不思議そうに見つめた。その表情が溢れんばかりにニコニコと微笑んでいたからだ。首を傾 げながらゆっくりと近付いたシュリーに、ナーギニーは後ろに回していた両手を勢い良く差し伸べた。
「あのっ……シュリー、これ……使ってはもらえないかしら……?」
目の前に現れた封筒に、瞳を見開き丸くするシュリー。驚きつつも同じく両手で受け取り、中身を取り出して「あっ!」と声を上げた。
「ナーギニーったら……いつの間に完成させたの!? それも素晴らしい仕上がりだわ……でも、使ってって……?」
「まだまだ未熟で恥ずかしいけれど……初めての作品は、シュリーに使ってほしいと思って……」
はにかみ俯いたナーギニーの口元は、それでも嬉しそうに弧を描いていた。柔らかみのある白い綿布は吸水性も良く、ハンカチーフとして使うには最適だ。しかし上質な絹糸をふんだんに用いた繊細な刺繍絵は、額に入れて壁に飾っても十分な程に芸術的であった。