【砂の城】インド未来幻想
 この舞踊は部位ごとに「カラナ」と呼ばれる百八の型を持つ。その組み合わせにより、舞は際限なく広がりを見せる。ナーギニーはもちろん全てを習得するには至らなかったが、今此処に描かれる一つの恋物語に、必要なカラナは完璧と言えた。

 出逢い、恋い焦がれ、(わざわ)いが降りかかり、壊れかけた愛が(すく)われ、ついに結ばれる……喜怒哀楽が精密に表現された白亜の舞台は、いつの間にかナーギニーの纏う深紅の愛色に染められていた。

 芸能の聖典「ナティヤ・シャーストラ」が身に宿されたかのような、一寸の狂いもない神秘的な流れ。あたかも目の前に坐す神々を、愉しませることに精を尽くした一人の巫女(デーヴァダーシー)

 終わりを迎えた大広間に、一瞬静寂が立ち込めた。が、直後鳴り響いたのは――終わりを知らない喝采の嵐であった――。


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