【砂の城】インド未来幻想
「シャニ様! シャニ様!! 火事でございます! 早く此処をお開けください!!」

 回廊へ続く扉が勢い良く叩かれ、女性の必死な叫び声が響いてきた。

「火事だと……? そんなバカな! 火元は何処だ!?」

 あと一歩でナーギニーの唇を手に入れるといった刹那、邪魔をされた王は苛立(いらだ)ちながらサッと立ち上がった。扉に近付き開いた途端、灰色の煙が一気に押し寄せる。

「シャニ様、どうか急いでお逃げください! 火元はこちらの隣室でございますので、どうぞあちらからっ」

 目の前に現れた若い侍女はサリーの裾で口元を覆い、すぐに逃げる方向を指し示した。辺りに充満する煙は焦げ臭く、確かに火元とされる隣室から溢れ出ているようだった。

「待て、奥にナーギニーがいる。彼女を一緒に――」

「わたくしがナーギニー様をお救い致します。シャニ様はまずご自分の御身(おんみ)を!」

 後に続いてきた家臣達が王を助け出そうと両際に(はべ)り、その腕を()くように掴まえた。


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