【砂の城】インド未来幻想
「それじゃあ話しておくけれど、あなたのいう「母親」は、あなたの実の母親ではないから。或る意味もっと大切な存在かもしれないわよ? そして彼女もシャニに操られ、利用されている」

「母が……母でない?」

 矢継ぎ早に差し出される衝撃の内容に、イシャーナの心と頭は混乱した。

「ああ……それと。これも記憶を辿る良い手掛かりになると思うから、少しの間なら貸してあげても良いわ。ナーギニーがわたしの為に作ってくれたの。だからどうか大切にして、返すことを絶対に忘れないで」

 そうしてシュリーはブラウスの(ふところ)から、大事そうに白いハンカチーフを取り出した。ガネーシャの刺繍絵を施したナーギニーからの贈り物。イシャーナもまた貴重な品を受け取るように扱い、シュリーにお礼と約束を交わした。

「ありがとう……きっと思い出してみせるよ」


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