【砂の城】インド未来幻想
「ナーギニー、どうか思い出して。僕のことを、僕との日々を、そして君の名を――」
寄り添う『光』が更に近付き、ナーギニーはその中に溶け込んだようだった。トロリとした甘露の感触が唇を纏う。それはとても新鮮で心洗われる感覚でありながら、常に手にしていた筈の宝物であった。懐かしい想いと共に、失われていたことの哀しみが浮き上がり、拡散し、消え去り……澄んだ気を宿した身は、深奥から止め処なく湧き上がる想い出を、一つ一つ確実にあらゆる細胞に焼きつけ直した。まるでめくるだけで書き込まれ、埋め尽くされていく書物の如く――
「……シ、ヴァ……様……」
ようやく言葉を紡いだ唇は、あの偉大なる神の名を『光』に告げた。
「思い出してくれたんだね、ナーギニー……いや、私の愛する妻……君は――」
「パールヴァティーです。シヴァ様……」
彼女の面差しは記憶と同時に自信を取り戻していた。凛とした空気が生まれ、流れるように二人の間を一巡した。
破壊神でありながら、救世主でもある最高神シヴァ。
その妻であり、美の最高峰ともいえる女神パールヴァティー。
過去が――前世がその手に戻った二人には、もはや恐れるものなど何も存在しない――。
◆いつもお付き合い誠に有難うございます*
次回が最終話となります。
何卒最後まで宜しくお願い申し上げます!
朧 月夜 拝
寄り添う『光』が更に近付き、ナーギニーはその中に溶け込んだようだった。トロリとした甘露の感触が唇を纏う。それはとても新鮮で心洗われる感覚でありながら、常に手にしていた筈の宝物であった。懐かしい想いと共に、失われていたことの哀しみが浮き上がり、拡散し、消え去り……澄んだ気を宿した身は、深奥から止め処なく湧き上がる想い出を、一つ一つ確実にあらゆる細胞に焼きつけ直した。まるでめくるだけで書き込まれ、埋め尽くされていく書物の如く――
「……シ、ヴァ……様……」
ようやく言葉を紡いだ唇は、あの偉大なる神の名を『光』に告げた。
「思い出してくれたんだね、ナーギニー……いや、私の愛する妻……君は――」
「パールヴァティーです。シヴァ様……」
彼女の面差しは記憶と同時に自信を取り戻していた。凛とした空気が生まれ、流れるように二人の間を一巡した。
破壊神でありながら、救世主でもある最高神シヴァ。
その妻であり、美の最高峰ともいえる女神パールヴァティー。
過去が――前世がその手に戻った二人には、もはや恐れるものなど何も存在しない――。
◆いつもお付き合い誠に有難うございます*
次回が最終話となります。
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朧 月夜 拝