【砂の城】インド未来幻想
 一族の白い衣を(まと)った男達と、黒い衣装に身を包んだ女達の、単彩(シンプル)対比(コントラスト)が美しく響き合う。重臣・侍女合わせて百を越える人数に、それぞれ伴う乗用家畜達は反面、色鮮やかな絹や宝石で飾り立てられ、まるで異国の遊牧民を思わせるいでたちだった。

 驚く程の数と姿に民衆が度肝を抜かれている間、一団の隊形は変貌を遂げ、先端より二手に流され中央が開かれた。『家臣』という名の城壁に守られた『砂の城』――シャニ=アシタ=クルーラローチャナ三世、その人――。

 消極的な色彩でまとめられた一族の中にあって、シャニだけは豪奢(ごうしゃ)な装いが眩しくすら思われた。赤みがかったオレンジ色のターバンには、虹色の孔雀の羽根が飾られ、上質な絹の白いクルタの上には、(みどり)の地に金糸の刺繍が煌びやかなベストを羽織っている。両手全ての指には金・銀・宝石が通されて、彼の(またが)った白馬にも、カシミール産のきめ細やかなカシミヤ毛で編まれた真紅の鞍が装着されていた。栄華の一部を切り取ったかのような絢爛(けんらん)豪華な身姿は、其処に佇む全ての声を黙らせた。


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